外貨準備を復興財源に使うことに対する反論
外貨準備を復興財源に使うにあたり3つの反論がある。まずは為替相場への影響だ。米国債を一挙に大量売却すればドルの下落、つまり円高になり、日本の輸出産業に大きなマイナスの影響を与える恐れがある、というものだ。
通貨当局としては、つい3月にドル買い介入を行ったばかりで、今その逆を行うことには躊躇もあろう。だが結局のところ介入は長期的に見れば効果がないことがはっきりした。ということはその逆をやっても悪影響はない、ということではないか。外貨準備取り崩しに対するもう1つの反対論は、米国が納得しないというものだ。確かに米国は日本や中国、アジア諸国が米国債を安定的に買い続けてくれることを期待している。だが、一方で米国は諸外国の為替市場への介入には反対している。
特に人民元相場については米中の最大の対立案件になっている。日本の外貨準備も元々は米国が反対していた日本政府の円安政策の結果、たまったものだ。だとすれば、原則論として、外貨準備の取た朋しに反対することはできないのではないか。
3番目の反対理由は、外貨準備は政府が円建ての短期証券を発行して国内の金融市場から資金調達(借金)し、それを原資に外国資産を購入して得られたものだから、もし外貨準備を売って円にするなら、まずは債務を返済しなければならない、というものだ。つまり、復興財源として外貨準備を使うのは、それに見合つ国債を発行するのと同じことになる、という王張である。
確かに外貨準備という資産の裏側では政府短期証券という負債がある。だが、外国為替特別会計の貸借対照表ははじめからバランスしていない。資産は外貨建てで、負債は円建てのため為替変動によってギャップが出てしまうが、それを単に資産・負債差額として処理している。したがって外貨準備の売却もそのような処理が可能なはずで、必ず同額の政府短期証券を減額させなければならない、という理由はない。
どうしても資産売却と同額の短期証券を減額したいのであれば、同額の普通国債に交換して、外為特会上の短期証券額を減らしてもよい。短期証券も政府の借金であり、しかも借り換えが続いて事実上普通国債と変わらないから、これによりトータルとしては政府の負債を増やすことなく、復興のために資金を得ることができるのである。