そもそも外貨準備とは<第一弾>
本来は、まさかの時の支払いに備えて国が蓄えておく外貨のことだ。実際、通貨危機などで対外債務の返済が困難になった場合や、輸入代金の決済金不足に備えた国の貯金という性格を持っている。しかし、日本は貿易黒字国であり、世界最大の債権国なので、そのような事態を想定して積み立てたわけではない。むしろ、円高が進んだときに為替市場に介入して、円を売ってドルを買った結果、徐々に積み上がった外貨が日本の外貨準備になっている。
外貨準備高の7割は米国債としてドルが保有されている
外貨準備の内訳の詳細は公表されていないが、米国債などの外国債券、ドルやユーロなどの外貨預金、金(ゴールド)、国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)などで構成されている。これらを財務省が外国為替特別会計(外為特会)で管理・運用しているほか、日銀も約4兆6000億円の外貨準備を保有しており、2011年4月末で合計1兆1355億ドル(約92兆円)に上る。
ただし、このうち約7割を米国債が占めると見られている。それは、ドルが世界の基軸通貨であり、「米国債が安全性と流動性に最も優れた運用資産」と考えられているからだ。
外賃準備は国の余剰資金(埋蔵金)なのか
それは違う。政府・日銀が、円売り・ドル買いの為替介入をするときには、外国為替資金証券という政府短期証券(国債)を発行し、民間から介入資金を調達している。したがって、外貨準備の反対側には国の借金が存在する。つまり、米国債やドル預金などの外貨資産を保有する一方で、国内にはそれに見合う円建ての負債を抱えていることになる。
資産の米国債と負債の政府短期証券は、いずれも満期がくれば償還される。しかし、米国債が償還されてドルの現金になり、それを円に交換して政府短期証券の償還原資にしようとすると、「ドル売り・円買い」を行わなければならない。これが円高を招ぐ恐れがあると政府は考えているので、結局、償還されたドルで再び米国債を買っている。一方で、政府短期証券も借り換え続けることになる。つまり、外為特会のバランスシート上は、資産と負債の両建てになっているが、資産(米国債)は資産のまま再投資し続け、負債(政府短期証券)は負債のまま借り続けているという構図だ。
誰がどう運用している
急激に円高が進んだ場合、財務省が為替介入の指示を日銀に出し、日銀が市場に介入してドル買い・円売りを号つ。問題はそこで得た巨額の外貨を誰がどヶ運用しているかだ。もちろん政府・財務相がその責任を持つが、実際には財務省国際局為替市場課の30数人のスタッフが運用を行っている。債券市場の動きなどを見ながら、国内外の金融機関から米国債を購入したり、預金したり、金を購入するなどしている。
運用方針は
「保有する外貨資産は安全性と流動性に最大限留意した運用を行い、この範囲内で可能な限り収益性を追求」し、「金融・為替市場への撹乱的な影響を及ぼさぬよう最大限配慮し、関係する通貨・金融当局と密接な連絡を取る」ことになっている。
実際の運用成績は
資産である米国債、外貨預金、貸付金などには利子がっくので、うまく運用すれば利益が出る。1952年以降の外為特会の累計の運用益は52兆円に上る。ただし、このうち31.5兆円かすでに一般会計に繰り入れられて使われてしまった。残りの運用益20.6兆円は積立金となり、外為特会の資産に財投預託金として計上されている。しかし、為替レートが変動すると円建てで見た場合に、為替差損益が発生する。外貨を買ったときより円安になれば差益、円高になれば差損が生じるのは一般の外貨投資と同じだ。11年2月末時点では35・9兆円の為替評価損が発生しているため、外為特会は差し引き15.3兆円の債務超過に陥っている。