外貨準備の使い方はオープンな議論が必要
海外では外貨準備を取尽朋して復興財源に充てる、という王張をしている専門家は少なくない。例えば、金融危機の研究で著名な国際経済学者の米国のラインハート夫妻が、3月25日の英『フィナンシヤルータイムズ』紙でこのような提言をしている。彼らによれば、日本が外貨準備の取り崩しをしないのは円高になることを恐れているからだが、外貨準備を財源にして国内での復興需要を喚起するほうが、円高を恐れて何もしないよりはるかによい経済政策だ、外貨準備とは正にこのようなときにこそ使われるべきだ、といもちろんタイミングややり方については日米両国で十分協議する必要はある。
例えば満期が来た米国債を順次現金化するのであれば、米国として反対する理由はない。財務省の資料によれば、1年以内に満期となる外貨証券(外国債)は14・5兆円ある。日米の専門家同士が話し合えば知恵は出てくるはずだ。為替相場を見ると、今米国債を売却すれば為替差損が出るように見えるが、逆に米国債の金利は歴史的な低水準にある。つまり米国債の価格は非常に高く、売却して値上がり益を確保するよいタイミングである。
日本は世界最大の財政赤字の国だが、同時にGDPの80%に匹敵する公的金融資産を保有する資産大国でもある。大震災は一過性の事態なので、その復興の財源としては増税など恒久的措置の前に、これらの資産の有効利用が検討されるべきだ。外貨準備はその1つだが、今まで公の場でのこの議論はなかった。日本政府は900兆円もの借金をしながら、外貨準備という形で米国に70兆円もの貸し付けをしている。米国の財政赤字がGDP比93%と日本の198%よりも圧倒的に低いにもかかわらず、である。
外貨準備の取ひ崩しはこのような歪んだ構造を是正する一歩になるだろう。経済協力開発機構(OECD)は今年5月の経済報告(エコノミックーアウトルック)のなかで中国や日本など特定の国を挙げて、「大きくなりすぎた外貨準備は国際的な金融危機の一因であり、問題として取り上げるべきだ」、としている。このような外貨準備に関する国際的な議論の動きも忘れてはならない。これを機会に、よりオープンで前向きな議論が起こることを望んでいる。